2月14日
2月14日、ヒカリがこうてつ島にやって来た。
いや、正確に言えば、私のところへやって来たらしい。
やけにうれしそうなヒカリ。
彼女は私に
「こんにちは!」
と元気よくあいさつをすると、その場に立ち止まった。
「どうかしたのかい?」
「はい。その……えへへ。」
ヒカリの体が左右に揺れて、カタと何かの物の音が聞こえた。
「ええとですね……。」
後ろに回している両手。
彼女は一体、何を隠し持っているのだろうか?
突然、彼女は気をつけをすると、次の瞬間、私に向かって両腕を伸ばした。
「ゲンさん!これ、受け取ってください!!」
そう言って私に頭を下げたヒカリ。
すっかり今日の行事のことを忘れていた私は面食らったが、すぐにうれしい気持ちになった。
「どうもありがとう。」
私がニコニコしながらそれを受け取ると、ヒカリはホッとしたようにため息をつく。
“一喜一憂”
そのような言葉が浮かび、私は彼女のことを微笑ましく思う。
それから、ポケットをガサゴソと探った。
「ゲンさん?」
ヒカリが不思議そうな顔をしている。
「何が出てくるんだろうか?」
と書いてある顔がかわいい。
「はい、これは私からヒカリへのチョコレートだよ。」
「へっ?」
くるくると彼女の表情が変わる。
「あ、ありがとうございます。」
片手で差し出したチョコレートをヒカリはそっと両手で受け取ってくれた。
(どうしてもらえたんだろう?)
きっと彼女はそう思ったに違いない。
素直な態度。
自分にはできないその態度が、彼女の魅力のひとつだと私は思っている。
「ところで、ルカリオはいないんですか?」
「ああ、ルカリオなら珍しくひとりで修行をしたいと言ってね、朝から洞窟の奥に籠っているよ。」
「そ、そうなんですか?」
ヒカリの頬がほのかに赤い。
「?」
そのわけは、私には分からなかった。
ともかく、今日は晴れているとは言え、やはりまだ寒い。
外で立ち話をしていたことに今更ながら気がついた私は、ヒカリを家の中に入れた。
「うん、ちょうど3時を過ぎたところだ。ヒカリ、お茶の時間にしよう。」