2人揃えば何でもできる!!

 

「よお、デンジ。」

「帰れ。」

「おまえ、それはないんじゃないの!?」

 

ここは平和なナギサシティ。

海と灯台そして、町全体が停電することで有名な場所だ。

 

「おいおい、前の2つはいいとして、最後のは自慢にならないだろうが!」

 

俺はナギサジムのデンジ。

かがやき しびれさせる スター ……らしい。

横にいるのはモジャ。

口うるさい赤いやつで、こうしてちょくちょくと俺のジムに顔を出す。

 

「ちょっと待てよ!『モジャ』ってなんだよ!?俺の名前は“オーバさま”だろ!!」

「ああ、そうか。やはりそれじゃだめか。」

「当たり前だ!人をなんだと思って……。」

 

俺はナギサジムのデンジ。

かがやき しびれさせる スター ……だ。

 

「――と、これで良し。」

「良くない!良くないぞ、デンジ!!」

「さっきからうるさいな。そもそもおまえが

『ヒカリが元気ないようだから、俺たちの華麗な漫才でも見せて笑わせてやろうぜ!!』

なんていうわけのわからないことを持ち出したんだろうが!

だから、俺がわざわざ台本を書いてやって――まあ、おまえには無理だからな。」

「なんだと!?」

 

こう言いつつも、俺とこいつとは結構仲がいい(のかもしれない)。

だから、これから君にすばらしい漫才を披露できると思う(たぶん)。

なぜなら隣のやつが言うには、『2人揃えば何でもできる!!』からだ!(そんなわけあるか!)

 

「……っつ。お、おまえ、わかっているじゃねーか!」

「まだ泣くのは早いぞ。」

「な、泣いてなんかないぜ!俺は燃えてきたんだ!!」

 

そう暑苦しくなってきたところで、俺たちの特技を君に特別に見せてやろうかと思う。

「ギャロップ、“かえんほうしゃ”だ。」

 

「あち〜〜〜!!だ〜、てめー、何すんだ!!?つうか、ギャロップもなんでこいつの言うことを聞くんだよ!」

「おまえこそ、何を言っているんだ。もっとボケらしくボケろよ。」

「そ、そうか。あえて、おまえの手持ちじゃなくて俺のポケモンを使用したのはそのためか。」

「ああ、初めてにしてはおまえとよりも息がぴったりだったがな。」

「くう〜、言ってくれるじゃねえか!だったら、俺も――。」

 

続いて俺の特技、第2弾だ。行くぞ!

「レントラー、ライチュウ、出番だ!!」

 

「ビビビビビ……が、はッ、つー、ごほ……。」

バタン!

「う〜ん、反応が一般的過ぎておもしろみに欠けるな。」

「デンジ、おまえ、やり方を考えろよ!どうして俺がこんなにしびれなきゃいけないんだよ!!」

「それは――。」

 

俺が かがやき しびれさせる スター ……だからだ。

 

「くっ!そう言われると納得がいくだけに、言い返せないぜ。」

「納得したところでなんだが……。」

「どうしたんだ?」

「おまえがひとり漫才をした方がおもしろいと思う。(というか俺は飽きてきた。)」

「今さら、何だよ。おまえの台本、むちゃくちゃだけど、俺は結構いけると思うぜ!!」

「いいや、おまえがこうしてしゃべって動いているだけで、何より誰より笑えると思うぜ!!」

「そう照れるなよ。ほら、ヒカリだって、俺たちの練習風景を見ている段階ですでに……。」

 

 

ヒカリはどういうわけか、ばったり出会ったオーバに連れられて、ナギサジムを訪ねていた。

「ああ、ヒカリじゃないか。」

「こんにちは。」

「まあ、そこら辺に座れよ。」

「ありがとうございます。」

来たからと言って、どうしていいのか迷った私は遠慮なく隅に座らせてもらう。

「なんかいつもと違うな。」

「だろだろ?だからさ、俺とおまえで……。」

「ああ?おまえいたのか?」

「なんだと!!」

少し離れたところでは、聞く気のないデンジさんと相変わらず熱いオーバさんが何やら話している。

「…………今日だけだからな。」

「よし!じゃあ、始めようぜ!!」

それから、だいぶ時間が過ぎたわけだったのだが……。

 

ヒカリは椅子に座ったまま寝ている。

どうやら俺たちのやり取りは、すばらしい睡眠効果を生み出したようだ。

そうなんだ。つかれた時は寝るに限る。

こうして“モジャ”ことオーバの体を張ったパフォーマンスは見事、彼女を救ったのである。

しかし、何よりの功績を残したのはこの台本を作りあげ、実践した俺なのだ。

 

「だからモジャはいらないって言ってんだろうが!!」

 

完。

 

 

文字通りわざわざ体を張ってまで、私を笑わせようとしてくれたオーバさんと、

何だかんだ言いながらも、最後まで演じてくれたデンジさんに感謝。