風のような人

 

 シュビッ!シュビッ!と音がする。

 自分の横を通り過ぎた陰に見覚えがあると思ったので、つい……。

 「キョウさん?」と声をかける。

 するとその影から、予想通り、キョウさんの声がした。

 「エリカ殿か。」

 ごんっ!!

 「……。」

 「……。」

 わたくしをチラリと見た瞬間、キョウさんは目の前の木に激突した。

 あまりにも見事に顔をぶつけられたので、わたくしは呆気にとられていた。

 「あ。」

 「むむ、まだまだ修行が足りないようだ。」

 「ああああ、あの!申し訳ありません!お怪我は……!?」

 「ない。」

 「そ、そうですか。」