ほうっておけない

 

 「もう引きずってもしょうがないだろう!!」

 「わしの、わしの先ほどまであった完成間近のレポートのデータが――。」

 「飲まず食わずにやっているからそうなるんだよ。ほら、ひとまずお茶くらい飲みな!」

 「キクコの淹れてくれたお茶じゃ〜〜!!」

 「ぎゃああ〜!?抱きつくなあああああ〜〜〜!!?」

 (そう言えば、寝てもおらんかったのう。ZZZ)

 

 迷惑なオーキドをゲンガーの力を借りてベッドに投げてやる。

 ボスッ!と枕に顔を打ち付けてもオーキドの目は覚めない。

 (やれやれ、とんだ迷惑じーさんだよ。)

 ため息をつくあたしをゲンガーが横目で見ている。

 「そうだね。そろそろ帰ろうか。」

 『別にいいですよ、泊って行っても。』

 「そ、そんなこと、勝手にできないだろう!?」

 『構わないと思いますけどね、シシッ。』

 目だけでそういうような感じのやり取りをした後、あたしは杖を突きなおし、

「帰るよ。」とゲンガーに声をかけた。

        

 ――が。

 

 「どうしてキクコがおるんじゃ?」

 次の朝。あたしはまだオーキドの研究所に居た。

 「仲良くゲンガーとソファーに座って……なんじゃ?おもしろい資料でも見つけて徹夜でもしておったのか?」

 「…………。」

 とぼけるにも程がある!

 昨晩、あたしが帰ろうとした拍子に寝言であたしの名前を呼んだくせに!!

 半分以上寝ていたはずなのに、『もう帰るのか〜?ん〜〜?』なんて人を呼び止めたくせに!!