約束しておくれ

 

覚えているかい?

最初にポケモンをもらったことを。

あたしは覚えている。

忘れない。

 

喜びとちょっとした不安、

初めて抱きしめたポケモンの温かさにきれいな目。

その目に映っているあたし。

 

目があった瞬間、

(ああ、この子と仲良くなれる!)

と思ったあたしに笑って応えてくれた、

最初のパートナー。

 

それからあんたと早速バトルして、

負けた悔しさも忘れちゃいないさ。

 

あんたとあたしはいつもライバルだった。

 

あんたは優しくて、賢くて、だけど、うっかり者で、整理整とんが下手だった。

ポケモンのことに詳しく、バトルも強くて、格好良い。

けれど、もてる割には女心がちっとも分かっちゃいなかった。

 

お互いにポケモンと旅をして、

数多くのバトルも経験し、ポケモンについての研究も熱心にしていた。

 

年月が過ぎ、

あたしは恋をした。

あんたも恋をした。

 

あたしはあんたが好きだった。

でも、あんたが好きなのはあたしじゃない。

何度か思った、自分の気持ちを告白することを。

しかし、やめてしまった。

幸せそうなあんたを見ていたら、とてもじゃないが言えなかった。

 

あたしは次第にあんたと距離を取るようになった。

そして、新しい道に進むべき時が来て、

あたしは四天王を目指すことにした。

 

これならあんたと遠くて近い距離にいられるだろう。

 

そうして恋の道も研究の道も閉ざして来たんだ。

それは、自分で決めたこと。

だから、あんたと共に生きる夢が叶わなくても泣かなかった。耐えられた。

 

けどさ、このあたしでも耐えられないことがあるんだよ。

ひとつだけ約束してほしいことがあるんだよ。

そうだよ、オーキド。

まだ先のことだって分かっちゃいるさ。

分かってはいるけど、考えなくはないんだよ。

 

お願いだから、あたしより長生きするんだよ。

先に――なんて言ったら承知しないからね!

 

口には出して言わないよ。

別の気持ちまで伝わってしまいそうでね。

だから、あたしの胸の中で思っているよ。

 

そう、ひとつでいい。

ひとつでいいんだ、それだけを……。