自分のトレーナーに対して「ゆめくい」を使うというダークな話(とは言っても「悪意」ではなく「一種の好意」として使う)なので、ご注意ください。
夢の中
愛しい主さまに花を贈りましょう。
たくさんの花を贈りましょう。
今日も眠れないのですか?
眠れても安らかには眠れないのですね。
それでしたらわたしが楽にしてあげましょう。
わたしは甘い夢の方が好きだけれど、
それよりも誰よりも愛しい主さまが過去の苦い夢にうなされているくらいなら
わたしが吸い取ってしまいましょう。
ゆっくりと少しずつ
じっくりと時間をかけて
そう理性は失わないように気をつけて
わたしは獣だから
油断すると主さまの魂まで取ってしまいそうで……。
それでも見てはいられなくて
「夜はあんたたちの時間だ。」
と、モンスターボールから数年前より解放してくださるようになった
大事な主さまを一時でも救って差し上げたく
わたしはこうしてあなたのお側にいるのです。
主さまは花がお好きでしょう。
少女の頃はよく笑っていたでしょう。
あの花畑は今でもあるのでしょうか?
わたしがゴースだった時の話。
遠い過去の話。
それでも主さまがいつまででも「夢」を見るのなら
わたしもどこまでも付いて行きましょう。
あの幸せな花畑を
また見せたいと願いながら、主さまの枕もとにいるわたし――。
夢の中でもあの花畑はあるのです。
でもそちらに行ってはいけません。
その花畑へたどり着く前に広がっているのは川。
人間が“三途の川”と呼ぶ物です。
そこに足を一歩でも踏み入れたら最後。
その川の水はとても冷たいけれど、目の前にある風景は渡る者が最も望む景色。
だから心身をマヒさせる程の冷たさは逆に心地よく
先に先へと進む度その者は若返っていく。
もしも、もしも
主さまがそこへ向かおうとするならば
次第にお若くお若くなられて
終いには少女になり笑顔を取り戻せるかもしれない。
その「夢」はわたしにとって
最高のごちそうであり、最も至福の時間(とき)なのです。
例えそうだと分かっていても
まだまだ主さまとは現世で共に過ごしたい。
だから、
愛しい主さまに花を贈りましょう。
たくさんの花を贈りましょう。
本物の花を贈りましょう。